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~大村さんからのお手紙(続き)~
もうひとつ、昨年、私にとってショッキングだったのは、
現在地に移り住むきっかけになった、近所の雑木林(国分寺崖線樹林)で、8月に「ナラ枯れ」というブナ科ナラ類樹木の細菌感染症が広がったこと。
樹高25mほどのコナラ2本のすべての葉が、真夏なのに枯れてしまいました。
道路に近い1本は、台風の強風によって倒木のリスクが高まることを考慮し、急遽伐採されました。
ナラ枯れの病原菌はキクイムシという小型昆虫によって媒介されますが、暖冬だとキクイムシの越冬率が高まり、
春以降、羽化したキクイムシがより広い周辺のブナ科樹木に移動していくことが、明らかになっています。
ナラ枯れそのものは戦前から知られていましたが、温暖化によってこれまでのバランスが崩れたことが、感染拡大の要因のひとつでしょう。
また、キクイムシと病原菌は樹勢の弱った老大木を「好む」傾向も指摘されています。
我が家の近所の樹林で感染したコナラは、もともとは「薪炭」の原料として大木にならないうちに伐採され、樹林全体として世代交代されていました。それが「エネルギー革命」によって利用されなくなり、樹木は大木化・老木化していきます。私は10年以上前からこうした雑木林の保全活動を手伝ってきました。そのなかで、亭々たる大木を好ましく、また誇らしく見てきました。
しかし、病原菌にとっても「好ましい」ことに気づいていませんでした。こうした都市森の中でも世代交代が行われ、多様性のある生きものたちによる、バランスの取れた生態系が必要であることを痛感しています。
定年後の10年余り、地域社会に積極的に関わるようにしてきましたが、昨年は悲しいこと、憤りを抑えられないことに次々と出遭って、トホホの一年でした。
でも、ポジティブな体験もありました。
私が属する市民団体が調布市から受託した環境講座をプロデュースし、それに続いて京王電鉄とのコラボによって、再生可能エネルギーだけでイルミネーションを点灯したことです。よかったら、次のYouTube動画を見てやってください。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
改めて、皆様にとって今年が良き一年でありますように。
大村哲夫より
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キクイムシの被害は多摩全域に広がっていて、大学のナラの木もやられています。
地球温暖化の影響が、貴重な都市の緑をむしばんでいっている。
温暖化対策は、私たちの足元まで忍び寄り、待ったなしの状況になっています。
大村さん、あらためまして、お便りの掲載をご快諾いただき、誠にありがとうございました。