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ものぐさ講師の徒然日記

窓際大学教員が、日々の暮らしで感じたことを、徒然なるままに綴っています(日・木曜日に更新)

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【TVドラマの話3】髭(ヒゲ)

Posted on 2023年1月22日 by monogusalecturer2021

~~~~~

1、髭を生やしている入間みちお裁判官

「イチケイのカラス」は、入間みちお裁判官(竹野内豊さん)が在籍している東京地方裁判所第3支部第1刑事部(イチケイ)に、坂間千鶴裁判官(黒木花さん)が異動してくるところから始まる。

 坂間裁判官は、最高裁判事として絶大な力をもっている日高亜紀判事(草刈民代さん)から、イチケイの立て直しを図るよう依頼されてやってきた。入間裁判官が裁判所主導の捜査をやりまくり、判決を下すのに慎重なものだから、なかなか案件が片付いていかない。坂間裁判官は、同郷の長崎出身の先輩でもある日高判事にそのテコ入れを託されてやってきたのだ(本当はそれ以外にも隠されたストーリーがあるのだけれど、ネタバレになるのでぜひドラマをご覧ください!)。

 なので、坂間裁判官の入間裁判官に対する風当たりは強い。そのなかでいつも気になるのが、髭を生やしている入間裁判官に対し、坂間裁判官が「髭を生やしていたら裁判官としての品位が落ちると何度言えばわかるんですか!」となじっているシーンである。

 たしかに、テレビのニュースで冒頭の一瞬だけ映る法廷のシーンでは、髭を生やしている裁判官を観たことはない。ということは、裁判官は髭を生やさないのが暗黙のルールになっているのだろう。

◇◆◇◆◇

2、髭がダメな理由が分からない!

 でも、なんで裁判官の髭が、裁判所の品位を落とすことにつながるのだろう?

 私には、何度考えてみても、その理由がまったく思いつかない。

 むしろ、髭を生やしている裁判官、生やしていない裁判官、長髪の裁判官、いろいろといるほうが、多様でいい気がするし、裁判所も自由なんだなと安心できる。自分がもし起訴されたとしたら、そんな自由な雰囲気の裁判所で、髭を生やした裁判官に判断してほしい。

 そう思って「裁判 髭」とネットの検索バーに入れて検索してみたら、とても興味深いYahoo記事が出てきた。大阪市交通局の地下鉄の運転士が、髭を理由に人事上の不利益処分を被ったのを不当として起こした裁判の判決に関する記事だ。

【記事】佐々木亮弁護士「ヒゲとルール~使用者は労働者にどこまで<身だしなみ>を求められるか」(2019年1月19日)

https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20190119-00111704

 簡単に要約すると、髭を生やしたり髪を伸ばしたりする行為は、個人の自由に属するものだから、相当ひどい場合でない限り人事面で制約を課すのは不当という運転士側勝利の判決が出たそうだ。

 それだけではない。この記事では、争点が髭や長髪という類似の不当人事に関する裁判の判例も紹介されていて、すべてが労働者側の勝訴だった。つまり、髭を生やす行為は、裁判所も労働者の自由だと認めているのだ。

 だとしたら、裁判官の髭が法廷の品位を汚すという理屈は、ますますわからなくなってくる。労働者の髭を生やす権利を擁護している裁判所で、そんな無法(?)がまかり通っていいのか、とすら思えてくる。

◇◆◇◆◇

3、髭は生やしていいの? 剃らないとだめなの? どっち!?

 髭が話題になると、どうしても忘れられない記憶がよみがえる。

 私の通ったM中学校は、男子は全員丸刈り強制だった。でも、髭はいくら伸びていても剃ってはいけないと怒鳴られていた。私は髭が濃いほうだから、3年生にもなると相当濃くなっていたのだけれど、それでもダメ。思春期で身だしなみを整えたいお年頃だったのに、髭を剃ることすら抑圧されていた。「ヒゲ剃ったら?」と言ってくれる父も祖母も、中学校のルールを話すと驚いていた。

 ところが、進学先のG高校では「何で髭を生やしているんだ!」と怒られた。中学校では剃らないことが絶対で、高校では剃ることが絶対だという正反対のルール。先生たちは、中高間でルールのすり合わせをするでもなく、まったく逆の行為を正当なものとして生徒に強いて、なんら心の葛藤を抱えることなく平然としている。

 私は、中学校のルールに忠実に従ってきただけだ。なのに、それとは全く逆のルールがあるのだとも告げず、いきなり注意してきた先生に対する、どこにもぶつけようのない怒りに打ち震えながら、当時の私は思った。

〈理不尽とはこういうことを言うのか!〉

◇◆◇◆◇

4、人の髭がどうだったって、ええじゃないか、ええじゃないか!

 中高生の時分に私が受けた、この理不尽さの意味が、いまだに分からない。

 そんなの、個人の自由でいいではないか。それとも、中高生は教育課程にある分際だから、社会の理不尽さを教えてやったのだ、とでも言いたいのか?と皮肉りたくもなる。

 でも、どう考えてみても、教育的理由だって成立しない。大正自由教育の流れを受ける中学校に通っている二男Yくんは、あご髭だけを生やしているけれども、彼の人格形成には全く負の影響を与えてはいない。むしろ、これまで本ブログでも記してきた通り、わたしの子ども時代より彼のほうが立派だと思うことがたくさんある。Yくんの学校には、彼よりもっと個性的な容姿の子たちがいるから、むしろ多様性を認めあうことの大事さを学べてもいる。

 考えれば考えるほどわからない。考えられるとしたら、それは、生徒を高圧的に統制するために、髭に関するルールがつくられている、ということくらいだ。いまだに髭に関する理不尽なルールを課している中学校、高校があるとしたら、先生方にはその無意味さとルールに惰性的に従う自分の姿をぜひ再考してほしい。そんな訳の分からないルールを強制され、いったいどれだけの子が、自分を抑圧せざるを得ない状況に追い込まれているかを。

 裁判所には、判例に依拠した、裁判官が自由に髭を生やせる自由な雰囲気が宿ってほしい。

「イチケイのカラス」を観ながら、髭に関するそんな思いを交錯させ、興奮している自分がいるのだった。

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