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ものぐさ講師の徒然日記

窓際大学教員が、日々の暮らしで感じたことを、徒然なるままに綴っています(日・木曜日に更新)

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【ウクライナ問題3】反戦の訴えはフェイク?

Posted on 2022年3月18日2022年3月18日 by monogusalecturer2021

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 一昨日深夜の地震により、避難を余儀なくされているみなさま、停電や断水でたいへんな状況におありのみなさま、怪我をされたみなさまのお見舞いを申し上げますとともに、1日も早い復興をお祈り申し上げます。また、お亡くなりになられたみなさまのご冥福をお祈り申し上げます。

 ほんらいならば、今日は19世紀の歴史を考察すべきなのですが、情報の少なさと自分の勉強不足とで文章化できずにおります。そこで、違った観点からウクライナをめぐる問題を考えたいと思います。

~~~~~

1、勇気ある行動のなかに潜む違和感

 数日前から、ロシア国営放送の生放送の番組内で、ウクライナ出身のスタッフであるマリーナ・オフシェンニコワさんが反戦を訴えたことが、勇気ある行動だと賞賛されています。

【参考】『日テレニュース』「「とても怖かった」ロシア国営放送で反戦訴えた女性“解放” 14時間以上も尋問か」(2022年3月17日)

https://news.yahoo.co.jp/articles/83765d16e193508d2b4abcab12c1b1d12c22c839

 わたしも勇気ある行動だと思うと同時に、ある強烈な違和感を覚えていました。

 それは、後ろでマリーナさんが大声で主張しはじめてもなお、アナウンサーが微動だにせずニュースを読み続けていた、という点です。

 ふつうに考えてみたら、スタジオのなかで、マリーナさんがイレギュラーに移動してくるだけでも、アナウンサーはそちらを目で追うなど反応を示すのではないかと思うのです。それに、たとえマリーナさんの移動には気付いていなかったとしても、マリーナさんが大声を張り上げた段階で、ビックリして後ろを振り向いたり、「何をしているんですか!」とたしなめたり、止めに入ったりするはずだと思ったのです。

◇◆◇◆◇

2、フェイクではないかという指摘

 ですが、もしかしたら、ロシア国営放送の内部で、かなり厭戦ムードが広がっていて、マリーナさんの行動を支持するスタッフが相当数いるのではないか、と思うようになりました。実施前のインタビュー映像もあったからです。そう考えると、アナウンサーが微動だにしなかったのは、それが、マリーナさんにたいする、暗黙の裡の支持表明だったのではないか、と思うようになりました。

 そうだとすると、ロシア国内で、しかも主要なメディアのなかで戦争反対の意識が広まっているというわけなので、この悲しい戦争が終わるきっかけになるのではないか、と思っていました。

 ところが、です。ネットを見ていたら、このマリーナさんの行動がフェイクなのではないか、という見方があるのを知りました。

【参考】『まぐまぐニュース』たいらひとし「ロシア国営TV乱入「反戦」女性に“フェイク”の疑い。罰金わずか3万円で即釈放の謎、稀代の美談に仕込まれたプロパガンダ」(3月16日)(リンクを貼ってもなぜか違う記事に飛ぶので、こちらのタイトルから検索ください)

 たいらひとしさんのこのネット記事によると、ウクライナ現地から日本へ情報を発信されているボクダン・パルホメンコさんが、『関西テレビNEWS』という番組で「ロシア国営メディアは元KGBの監視下にあり、生放送であっても8分間の遅れて流れるシステムなので、もし乱入があっても、放送は事前に止められるはずだ」と指摘されたというのです。

◇◆◇◆◇

3、検閲をすり抜けた理由

 ロシアでは、生放送の番組も8分遅れで放送されていて、その間に諜報機関の検閲を受けている。

これは、重要な事実の指摘だと思いました。

 ソ連時代のKGB(ソ連国家保安委員会)の後継機関は、Wikipediaによると4つあるそうです。

(Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ 「ソ連国家保安委員会」の項)

・ロシア連邦保安庁 (FSB) – 防諜・犯罪捜査

・ロシア対外情報庁 (SVR) – 対外諜報

・ロシア連邦警護庁 (FSO) – 要人警護

・ロシア連邦大統領特殊プログラム総局 (GUSP) – 地下シェルター等特殊施設の建設・運営

 このうちどこがテレビ放送の検閲をしているか、私にはわからないのですが、それはさておき、検閲をしているのに流れてしまった、という事実から考えられるパターンがいくつかあります。

 ①検閲官のトイレや居眠り等の理由により、マリーナさんの動きを見落とした。

 ②KGBの後継機関でも、厭戦ムードが広がっていて、検閲官がみてみぬふりをした。

 ③諜報機関が、わざとやらせた。

◇◆◇◆◇

4、検証

 ①は、おそらくないと思われます。国営放送の検閲をひとりで担っているとは考えにくいですし、万が一そんな理由で見逃してしまったら、おそらく厳しい罰が待っているでしょうから、担当官も気合を入れて視ていると思うからです。

 ②もまた、自分で書いておきながら何ですが、ありえない想定かなと思います。たとえ厭戦ムードが諜報機関内で広がっていたとしても、最近、プーチン大統領に諜報機関のエリートが粛清されたという報道が流れたばかりです。なので、〈今回の戦争はおかしいと思っているけど、とてもじゃないけどみてみぬふりなどできない〉というのが現場の空気になると思います。

 ということは、たいらひとしさんも「元KGBのプーチンは民衆の反乱を抑える準備にぬかりがない。 わざと報道局員の反乱を演出し、その後、見せしめとして酷い罰を与える。あるいはガス抜きとして、民衆の声を代弁させて、国家に対する批判から目を逸らさせる~といったことを考えていてもおかしくはない」と推測されているように、③の見方が俄然有力になってくるのです。

◇◆◇◆◇

5、もしフェイクだったとしたら、なぜ?

 もうひとつ、事後の報道で違和感がありました。プーチン大統領が一番やってほしくない国営放送での反戦の主張という「罪」を犯したマリーナさんが、裁判を終えてからふつうにインタビューを受け、しかもそれが放映されることなどありえるのだろうか? 偶発的な乱入だったのだとしたら、当局は、インタビューできないようメディアへの相当な規制をはるのではないか?と。

 これにくわえ、先に述べた違和感もあったので、ボクダンさんの重要な指摘を知ってから、なるほど、これはかなり劇場化されたフェイクなのではないか、と思えてきたのです。

 反戦の主張をしたら、スピード裁判で罰金刑が課されるという報道。そしてこれから繰り返されるであろうはずの、「戦争」という偽情報を流した罪の量刑(最長で15年の禁固刑のようです)をめぐって行われる裁判の模様の報道。結果、最終的に言い渡される、マリーナさんへの重い罪・・・。

 こうした流れで劇的に報道を続けた結果、ロシア政府が何が得られるかといえば、それは、ロシア国民にたいする反戦行為への委縮効果だと思います。

 実際、プーチン大統領は、3月16日の会見で国内の反対勢力に厳しく対処すると強調したそうです。

【参考】

・『東京中日スポーツ』「ロシア・プーチン大統領の『くずどもと裏切り者』発言に「まともな首脳は言わない」SNS上で厳しい声」(3月17日)

https://www.chunichi.co.jp/article/436416

・『Bloomberg』「「くずどもと裏切り者」はロシアから一掃-プーチン大統領が警告」(3月17日)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-03-17/R8V218DWLU6901

◇◆◇◆◇

6、真相は分からない

 いろいろ予想してきましたが、大急ぎで断っておかなければならないことがあります。それは、真相は闇のなかだということです。

 もし、ここで推測してきたとおり、この報道がじっさいにフェイクで、マリーナさんが諜報機関の意向で行動されたのなら、判決を受けたとしても、おそらく裏でこっそり釈放されると思います。

 一方、マリーナさんが本当に自分の意志で反戦の主張をされ、それを多くのスタッフが支えていたのだとしたら、こんな推測をしてしまって申し訳ないとお詫びしなければなりません。

 諜報機関がマリーナさんたちの動きを知っていて見逃したのだとしたら、マリーナさんの崇高な意志が、委縮効果を狙った権力側に利用されたことになるからです。また、マリーナさんは、厳罰を受け入れざるを得ない状況に落ちってしまうからです。

 真相はわからない。でも、戦時中はどんなフェイクニュースがあるかもわからない。ウクライナの多くの方たちがこのニュースをフェイクではないかと疑っている、という事実もある・・・。

 マリーナさんに関する今後の報道を、注意深く見守っていきたいと思います。

2 thoughts on “【ウクライナ問題3】反戦の訴えはフェイク?”

  1. 齋藤守弘 より:
    2022年4月23日 5:45 PM

    https://ria.ru/20220403/ukraina-1781469605.html
    ロシアがウクライナにすべきこと

    https://note.com/_ajisai_san_/n/ne3bb0a6e3d36
    ロシアがウクライナにすべきこと(翻訳)

    RIA Novosti(РИА Новости)という、ソ連邦崩壊後にプーチン大統領により再編され、国内向けの広報機関になったメディアがあります。
    このサイトの専属コラムニストで政治学者・民族主義運動家のTimofey Sergeytsev(Тимофей Сергейцев)の書いたコラムを読むと、プーチンロシアのウクライナに対する考え方がよくわかります。

    この国内向け国営メディアのなかで、Timofey Sergeytsevは、プーチン大統領が言う非ナチ化というものをわかりやすく説明し、そして日本では考えられない事を主張しているのです。
    それがナチス化したウクライナへの厳しい処断です。

    簡単に言うと、政権リーダー達の粛清だけではなく、消極的にせよナチ化を受け入れた一般国民への厳しい処断と、主権を取り上げ、政治だけではなく文化や教育も奪い、独自の非ナチ化政策を進めるという内容です。
    これはもはやウクライナ自体の否定であり、ロシアの占領後はウクライナはロシア連邦に編入され、同化させるという事になります。
    これがプーチン大統領の息のかかった国営メディアに堂々と掲載され、ロシア国民への、今回の侵略戦争の大義にされているわけです。

    私は奥方に在宅介護で大変お世話になった者です。
    おかげで母は苦しむことなく八日早朝に旅立つことが出来ました。

    よろしくお伝えください。

    返信
    1. monogusalecturer2021 より:
      2022年9月24日 9:38 PM

      齋藤様
       はじめてメールいたします、ものぐさ講師です。
       このたびは、プーチン大統領の考え方がわかる情報をご教示いただき、誠にありがとうございます。
       3月の時点で、自分でもいろいろ調べて、ウクライナ侵攻に関する記事をたくさん書きたいなと思っていたのですが、最新の弊ブログ記事で記した近況により、叶いませんでした。
       あれから7か月が過ぎようとしている今、世間での風化がいちばん怖いと感じています。
       いまの体調でどこまでできるかはわからないのですが、頂いた情報も踏まえつつ、自分に何ができるのか考えながら、ウクライナ侵攻についての記事も書いていきたいなと考えております。
       重ねて御礼申し上げますとともに、今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
       お母さまのご逝去のこと、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
       その節は、こちらこそ妻がお世話になりました。
       実は、妻は今年の初夏にNステーションを異動となりました。
       ですが、近いうちにご挨拶に伺いますと申しております。
       その際はよろしくお願い申し上げます。

       ものぐさ講師(澤 佳成)
       

      返信

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