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ものぐさ講師の徒然日記

窓際大学教員が、日々の暮らしで感じたことを、徒然なるままに綴っています(日・木曜日に更新)

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【ウクライナ問題2】ウクライナの歴史2(14~17世紀)

Posted on 2022年3月17日2022年3月18日 by monogusalecturer2021

~~~~~

 現在のウクライナの首都であるキエフは、9世紀から13世紀まで存続したキエフ公国の首都であったことが分かりました。また、この国を誕生させたのが、侵略してきたノルマン人だったことも分かりました。しかし次第に、圧倒的に人口の多いスラブ人の国へとなっていったことも分かりました。

 そして、このキエフ公国が、黒海沿岸域を含まずに、むしろ現在のモスクワをはじめとしたドニエプル川流域を中心に発展し、白海のほうまで北方に版図を拡げていたこともわかりました。この歴史は、現在のウクライナ紛争につながる側面がありそうです。なぜなら、愛読してきた歴史書の影響により、プーチン大統領が今回の侵略でその復活を目指しているといわれる帝政ロシア期の版図が、その起原であるキエフ公国の版図と重なっているからです。だからこそ、プーチン大統領の頭のなかで、キエフのあるウクライナの北部への侵略が正当化されてしまっているのかもしれない、と思えるからです。

 また、このロシアの起原であるキエフ公国の版図には、プーチン大統領がウクライナを兄弟国と呼ぶ理由があると考えられます。

【参考】『ダイアモンドオンライン』山中俊之さん「兄ウクライナと弟ロシア、因縁と愛憎の歴史的背景を元外交官が解説」

https://diamond.jp/articles/-/297394

 そこで今日は、プーチン大統領の目的としている帝政ロシア期の版図に、いったん外国に支配された、現在のウクライナを形成している旧キエフ公国地域がどう組み込まれていったかという時点まで、わかったことを記しておきたいと思います。

・・・・・

〇14世紀

▽13世紀末~ キプチャク=ハン国の間接的支配を受けていたモスクワ大公国が、次第に勢力を増す

※陸の帝国の特徴として、一定の人頭税を納めさえすれば宗教に寛大なところがあった(ハウ2003)。

▽現在のウクライナ東部は、リトアニア大公国の支配下に

▽黒海沿岸にはモスクワ大公国の力は及ばず、クリム=ハン国の支配下に

・・・・・

〇15世紀

▽キエフ周辺はリトアニア大公国、南部黒海沿岸と東部は引き続きクリム=ハン国の支配下に

▽関連:1458年 モスクワ正教会が独立

▽関連:1480年 モスクワ大公国、イヴァンⅢ世の治下でモンゴルの支配を完全にふりはらい(「タタールのくびき」からの脱却)、ロシア帝国が誕生

・・・・・

〇16~17世紀

▽キエフ周辺はポーランド王国、南部黒海沿岸は引き続きクリム=ハン国の支配下に

▽1620年ころ~ ポーランド=リトアニア共和国内で正教徒の住む地域を小ロシアと呼ぶように

 →これがのちにウクライナを小ロシアと呼ぶきっかけとなった(小ロシアという言葉自体は前から有)

▽1654年 ウクライナ草原地帯のコサック(武装騎馬隊)のリーダー、フメリニツキーがポーランド王国に反乱

▽1654年 フメリニツキー、ロシアに支援を要請し、ポーランド・ロシア戦争勃発(~1667年)

※重要:ロシア帝国は、このころ、まだおおきな国家ではありませんでした。むしろ、カトリックの騎馬隊を擁する東方のスウェーデンやポーランドの侵攻を恐れている立場でした。

・・・・・

〇18世紀

※重要:ピョートル大帝の治世の頃、大きな版図を築き、強大な国家になっていく。

▽1772・93・95年 ロシア帝国、エカチェリーナⅡ世(在位期間1762~96)治世のとき、3度の「ポーランド分割」により現在のウクライナ西部を獲得

※エカチェリーナⅡ世は、長年の宿敵であった、スタニスワフ2世の治めるポーランド王国全土を掌握しようとしたが、その後の影響を恐れたプロイセンのフリードリヒⅡ世がオーストリアを誘って三国でのポーランド分割を行った。

※私見(要確認・情報提供お願いします!):ポーランドがロシアを恐れNATOに加盟したのは、第二次大戦時のナチスとソ連との割譲による故国喪失や冷戦時代の圧力に加え、18世紀末のこの故国喪失の歴史も関係しているかもしれない。

▽1774年 エカチェリーナⅡ世は、クリム=ハン国の国会北部周辺域支配を認めていたオスマン帝国との条約でクリム=ハン国の独立を認めさせる

▽1783年 ロシア、クリム=ハン国を併合する

~~~~~

 18世紀になって、プーチン大統領が尊敬しているといわれるエカチェリーナⅡ世が登場しました。プーチン大統領が海外首脳と会合を行う部屋に肖像画が飾ってあるといわれる、あの女帝です。ポーランド王国から、ロシアの起原であるキエフ公国の首都であったキエフを取り戻してくれたエカチェリーナⅡ世は、プーチン大統領にとって敬愛すべき人なのでしょう。

 (この段落のみ3月18日に追加)この、エカチェリーナⅡ世によるキエフ(小ロシア地域)の奪還が、いまのロシアとウクライナとの関係性につながっていきます。ロシア帝国が大ロシアとなり、そこからみて辺境の地となったキエフ地方(小ロシア)が、まさに辺境を意味するウクライナという呼称で呼ばれるようになったのです。

 でも、エカチェリーナⅡ世がキエフをロシア帝国に組み込めたのは、軍事力にものを言わせてポーランドを割譲したから、でした。

 しかも、哲学の力により国際法が整備されて行き、武力で他国を侵略してはならないというコンセンサスのある現代において、武力で版図を拡げても許されていた時代に郷愁を覚え、かつての帝政ロシアの版図を武力で再び統一しようとする侵略は、絶対に許されることではありません。

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【参照した文献やWebサイト】

・スティーブン・ハウ(2003)『一冊でわかる 帝国』岩波書店、見市雅敏訳

・浜島書店編集部(1997、改訂版2016)『ニューステージ 世界史詳覧』浜島書店

・『世界の歴史まっぷ』https://sekainorekisi.com/

・『世界史の窓』「キエフ公国」http://www.y-history.net/appendix/wh0601-125.html

・『コトバンク』https://kotobank.jp/ の「キエフ公国」等の項目

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