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ものぐさ講師の徒然日記

窓際大学教員が、日々の暮らしで感じたことを、徒然なるままに綴っています(日・木曜日に更新)

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【学生の眼2】「結果と結論」

Posted on 2021年2月22日 by monogusalecturer2021

◇◆◇◆◇

 昨日の記事で、おかしなことが起こっているなと感じたら、理性を用い、その出来事の原因をみつめる作業が大事では、と書きました。

 このことについて、「科学とは何か」を考えるミニレポートとして提出されたBさんの論考は、たいへん興味深い視点から、コロナ禍の下で常識とされていることのおかしさを指摘されています。

 ご本人に了解を得て掲載させて頂きましたので、ぜひご覧ください。

◇◆◇◆◇

タイトル:結果と結論

 科学技術が発展した今の世の中でさえ、間違った情報や感覚が世の中に広まることがある。この原因について、新型コロナウイルスに関する報道の具体的な事例をもとに考えてみることにした。

~~~~~

 3 月の世の中がまだマスク不足だったころ、朝の情報番組で「使い捨てマスクは洗っても 効果があるのか」という特集をしていた。番組内では、実際に洗ったマスクにおける、フィ ルターの役目を果たしている繊維がボロボロになっている映像を流すことによって、ウイ ルスの侵入を防げなくなることを示していた。そして、「使い捨てマスクは洗うと効果がなくなる」と結論づけていた。

 この話について、全く論理的ではないと思った記憶がある。

 第 1 に、繊維がボロボロになることと、ウイルスの侵入を防げなくなることの因果関係が 証明されていない。繊維がだめになってもそこに布はあるのだから、ウイルスの侵入を防ぐ効果はあるかもしれない。

 第 2 に、ウイルスの侵入を防ぐ以外のマスクの役割について、全く触れられていない。マスクをすると、例えば、くしゃみをしたり、会話をしたりするときの飛沫を飛びにくくすることができる。また、ウイルスを追い出す働きをする鼻の粘膜がマスクをしているときのほうが、鼻が冷えにくいという点でよく働く。もし、ウイルスの侵入を防げなかったとしても、 他の効果に言及しなければ、「効果がない」と断定することはできないはずである。

「洗われたマスクの繊維がボロボロになっている」ことだけで、「使い捨てマスクは洗う と効果がなくなる」と結論づけるのは、明らかに飛躍しているのである。

~~~~~

 次に、違う事例について考える。各国の感染者数の調査結果が出てきたころ、日本の感染 者数が欧米に比べて低いことを取りあげて「日本人は感染しにくい」と結論づけている番組 があった。

 日本の感染者数が欧米に比べて低い理由としては、新型コロナウイルスが弱毒化したこと、日本人の手洗いうがいの習慣、季節性のコロナウイルスによる交差免疫等、さまざまな ものが考えられている。もし、日本の感染者数が欧米に比べて低い理由が日本人の習慣や免 疫であるならば、「日本人は感染しにくい」は正しいかもしれない。一方で、理由が日本の 新型コロナウイルスが弱毒化していることであるならば、「日本人」ではなく「日本」は感染しにくいのほうが正しいということになる。調査結果はあくまで日本と欧米を比較して いるものであり、日本人と欧米の人を比較しているわけではないのである。

~~~~~

  1つ目の事例は、「示したい結論があった時に、少しの根拠で結論づけてしまう」事例で あり、2つ目の事例は「その結果が得られた条件や理由を考えずに、結論づけてしまう」事 例である。どちらも、真理にたどり着くためには不適切であるが、行われがちなことだと思 う。真理にたどり着くためには、「確かめたい仮説があった時に、どのような結果が得られればそれが証明できるのか」や、「ある結果が得られた時に、そこから何が言えるのか」を きちんと判断する必要があると思う。

~~~~~

 この世界は、真理となる前提がすでにあるわけではない。だからこそ、真理にたどり着く ためには、実験をしたり、調査をしたり、数学的に解析した結果から推論する必要がある。 そして、真理にたどり着けるかどうかは、この推論がうまくできているかどうかにかかって いると思う。以上から、「科学的に見る」ためには、推論する力、すなわち結果と結論を正しく結びつけられるような視点が重要であると考える。

(Bさん、掲載をご快諾いただき、ありがとうございました!)

1 thought on “【学生の眼2】「結果と結論」”

  1. 松林 より:
    2021年2月22日 2:15 PM

    学校にいると、謎の論理がまかり通ることがよくあります。例えば、黙働清掃です。これは「静かにさせれば働く」という前提に立っています。ですが、実際は「バレないようにサボる」ようになっていて、一見すると働いているように見えるかもしれませんが、結果的に綺麗になってはいません。
    先生方はこの状況を知らないわけではありませんし、おかしいと疑問を持っている方もいます。
    しかし、私の職場ではおかしいなと思いながらもこの仕組みは6年間続いてきました。
    長く勤務している先生に尋ねると「前の校長が始めたから」「荒れていた頃の名残」と答えが返ってきました。
    なんかおかしいな、理屈が通っていないなと思っていても変えられない実態があります。そのような、科学を超える力には、論理的に話しても変わらないのではないかと思ってしまいます。子どもには民主的な教育をしたいと思っていますが、教師の側にも必要な気がします。
    といったところで、何ができるのかがわからなくて、結局黙り込んでしまっています…
    学生さんのレポートを読んで反省させられました…

    返信

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