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1,あまりにも低い補償額
私たちの免疫が落ちる冬が到来したうえ、例年より寒くなるのが早かったからなのか、はたまたGoToトラベルの停止が遅すぎたからなのか、その真相はもう少し時間が経ってみないと分からないけれど、年末から新型コロナウイルスの新規陽性者数が急増した。
政府は、内閣支持率の急激な落ち込みに慌てたらしく、年明け1月7日からの非常事態宣言の発出を決めた。
このときビックリしたことのひとつが、時短要請に応じてくれた飲食店にたいする補償が、店舗規模の大小に関係なく、1日あたりたったの6万円で一律にするという政府の方針だった。しかも、基本的には飲食店に対する補償だけで、ほかの業種には補償すら検討されていなかった。
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2,破られた約束
驚いたのは、それだけではない。
首相は当初、1月13日の記者会見で、国が緊急事態宣言を発出していない地域でも、緊急事態に該当する状況になり、飲食店への時短要請をしなければならなくなった場合には、国として補償を下支えすると表明していた。
ところが、沖縄県をはじめとした一部の自治体が独自の緊急事態を宣言しても、約束通りの補償を出してくれず、問題になっている。
1日あたり6万円という、焼け石に水の額の補償ですら約束を破って出し渋るという、本気でコロナを抑えるつもりがあるのかと言いたくなるお粗末な対応に、呆れてしまった。
不十分な補償で、いつ終わるともわからない困難を乗り越えろという政府発出の精神論が、まかり通ろうとしている。
【参考】【菅政権】菅政権「同じ支援」の約束反故 黙殺される独自宣言16道県|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)
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3,オリンピック作戦と竹やり
アジア太平洋戦争時の、オリンピック作成という米軍の本土上陸計画をご存知だろうか。私の郷里、九州に米軍が上陸・占領し、そこを拠点に東京への攻撃を強めていくという計画だった。
NHKスペシャルの秀逸なドキュメンタリー『本土空襲 全記録』(2017年8月12日放送)では、米軍上陸作戦に備える日本側の動きが紹介されている。
米軍の上陸に備えて、学校や職場で行われた竹やり訓練。当時14歳だった宮崎市在住の関屋文夫さんは、敵兵がきたら竹やりで急所を突けと教えられたと述懐されている。日本三大砂丘のひとつ吹上浜では、戦車の下に飛び込む特攻訓練が行われていたと、当時8歳の中山茂雄さんが証言されている。
圧倒的火力と機関銃で迫ってくる米軍を前に、竹やりで戦うよう市民が訓練されていた、という事実。しかも政府は、「義勇兵役法」を制定し、小中学生も志願すれば兵員になれるようにした。
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4,竹やりの精神
圧倒的な力を持つ敵軍にたいし、竹やりや手持ちの爆弾といった不十分な装備で立ち向かい、何とか持ちこたえろと、およそ合理的な軍略とはいえないことを真面目に言っていた政府の姿勢。
収束がいつになるか分からない未知のウイルスに対し、不十分な補償だけで何とか持ちこたえろと飲食業者に無理難題を吹っ掛ける政府の姿勢。
これら両事例に共通する、どうひいき目に見ても有効だとは言い難い対策だけで満足し、その結果としての国民の前途多難な未来を想像できていない政府の精神論を、とりあえず〈竹やりの精神〉と呼んでおこう。
この〈竹やりの精神〉は、不十分な装備/補償しか与えず困難を乗り越えろと指示する点で、コロナ禍のいまも、アジア太平洋戦争時も、政府の姿勢として共通している。