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1、バイデン氏、当選確定の一報
昨夜、「部活の練習がきつかった~」と言ってグダグダしていたBくん。今朝起きると咳き込んでいたので、熱はなかったけれど、念のため休ませた。夕方には復活したので、もう大丈夫だろう。
Aくんもまた、日曜日から「喉が痛い~」と訴え昨日から自宅療養中。ただこちらも熱はなく、昨夕、かかりつけのクリニックでして頂いた検査でも溶連菌は陰性だった。先生に「ただの風邪でしょう、コロナの症状が出てこなければ大丈夫」と太鼓判を押していただいた。
そんなグダグダの二人と、今朝、羽鳥慎一モーニングショーを見ていたら、バイデン氏の当選確定というニュースが小さく放映された。
私は、心の底から「よかった~」と思った。でも、バイデン氏が当選したから、というわけではない。軍事力の行使も辞さない積極外交を展開すると予想されているバイデン氏が大統領になったら、トランプ大統領の4年間よりもむしろ世界の平和が脅かされる可能性だってあるのだから。
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2、司法の矜持――アメリカ民主主義の危機の第1段階を脱した!
ではなぜ、バイデン氏の当選確定に喜んだのか。その理由は、あくまでも、アメリカの民主主義の形式が破壊されずにすむ方向へと一歩前進したから、である。
これで、アメリカの民主主義を崩壊に導きかねない3つの側面のうちの2つで、正当な手続きがなされる結果となった。その事実に喜んだのだ。
では、アメリカの民主主義を崩壊に導きかねない3つの側面とはなにか?
そのうちのひとつは、司法闘争だったのだけれど、これは3日前に決着がついた。
周知のとおり、保守派の判事が多数を占めている最高裁での審理に持ち込むと、トランプ大統領に有利に作用し、もしかしたら投票結果が覆る可能性もあるのではないかと噂されてきた。
けれども最高裁は、4つの激戦州(ジョージア、ミシガン、ペンシルヴェニア、ウィスコンシン)で不正があったと主張していたトランプ陣営の訴えを退けたのだ(※1)。
これで、トランプ大統領は、司法の場で当選を勝ち取る可能性がなくなった。
最高裁判事が、民意を尊重し、裁判官としての矜持を守ってくれてよかった。
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3、代議員の矜持――アメリカ民主主義の危機の第2段階も脱した!
しかし、アメリカの民主主義に危機をもたらしかねない3側面のうち、あと二つが残っていた。そのひとつが、代議員投票だったというわけだ。
もしも、代議員の大量造反で選挙結果が覆されたら、いくらバイデン支持者がおかしいと声をあげても、トランプ大統領再選!となっていたかもしれない。代議員の造反は、違法ではないからである。
実際、前回2016年の代議員投票では、造反があった。民意を反映してトランプ氏に投票すべき代議員のうち2名が造反、クリントン氏に入れるべき5人が造反したのだ(※2)。
しかし、そうなっていたら、いくら違法性はないとはいえ、選挙制度は実質的に形骸化する。民意が反映されないのであれば、民主主義は死んでしまう。
その予兆はあった。トランプ大統領は、共和党員の州知事にたいし、代議員に造反させるよう迫ったといわれているし、この動きに積極的に呼応する州知事もいたからである。
だからヒヤヒヤしていたのだけれど、投票結果のとおりに代議員が投票し、ひとりも造反が出なかったという結果に、「よかった~」と胸をなでおろしたのだ。
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4、残るアメリカ民主主義の危機の要素――軍を取り巻くきなくさい動き
ただし、アメリカの民主主義を崩壊に導きかねない、最後の大きな要素が残っている。それは、軍をめぐるきな臭い動きである。
周知のとおり、トランプ大統領は、投票結果に納得がいかないという圧力をかけるよう、自分の支持者たちへ暗に呼びかけていた。それに呼応した支持者たちが押しかけた自治体の庁舎や投票所では、混乱が起こった。
そうした混乱に拍車をかけかねないのが、軍の動きだった。
これも周知のとおり、BLM運動が盛り上がったとき、トランプ大統領はどうやら本気で軍隊を出動させるつもりだったらしい。けれども軍の高官らの反対にあって、しぶしぶ断念した経緯がある。軍の高官は、選挙結果をめぐる混乱に対しても、不介入の原則を貫き通した。
それをよく思わなかったからか、11月、国防総省の高官が相次いで辞任したけれども、実質的には更迭だったらしい。しかもその後任には、トランプ大統領に忠実な人材が起用されたという(※3)。
これはすなわち、自分が大統領になるためなら、最終的な手段として軍隊の出動も辞さないという覚悟なのではないか。そういう推測もありうるのだ。
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5、バイデン大統領の誕生まで、油断はできない
最悪の場合、トランプ大統領に忠実な軍の高官が、大統領の意を汲み、戒厳令を敷いたりしたら、誰も何も言えなくなってしまうだろう。バイデン氏を支持するデモが起こったとしても、軍によって弾圧されかねないのだから。
もしそうなってしまったら、アメリカに軍事独裁政権が誕生しかねない。
そして、アメリカが軍事独裁化したら、政治的な自由主義が、世界中で窒息しかねない。
悪夢である。
残念ながら、この懸念は、バイデン大統領が来年1月20日に就任するまで、まだ払拭することはできない。
アメリカの民主主義が守られるか否か。それは、世界における政治的自由主義が守られるかどうか、という問題でもあるのだ。
どちらに転ぶかは、軍の高官が、トランプ大統領に忖度せず、憲法に忠誠を誓い、最高裁判事や代議員と同じのように民主主義の担い手としての矜持を保てるかどうか、にかかっている。
〈こういう問題の大きさに比べると、今朝のニュースでの取り上げ方は、あまりにも小さすぎたのでは?〉と思わずにはいられない。
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【注】(注1)BBCニュース「【米大統領選2020】 連邦最高裁、トランプ氏応援の訴え退け 4州の結果無効を認めず」https://www.bbc.com/japanese/55284299
(注2)デイリー「バイデン氏、270獲得でも危機…選挙人「造反・無効」投票は通常ある 手嶋氏指摘」https://news.yahoo.co.jp/articles/46a1ec781d0654deec7c54de0dea4ea3134fd30f
(注3)時事ドットコム「米国防総省、相次ぐ高官辞任 政権交代まで「危険な70日」」https://www.jiji.com/jc/article?k=2020111100758&g=int