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1、K子さんに電話する
〈どうしよう、どうしよう・・・〉
モモちゃんを外に逃がしてしまい狼狽しまくっていた狼狽した私は、短時間の捜索から戻ってくるなり、先に仕事に出ていたK子さんに電話をした。
当然、怒られると思った。
でも、K子さんは「仕方がないよ」と言ってくれた。
「落ち込まないでね。お仕事がんばって。」
意表を突かれたあたたかい言葉に、また涙があふれてきた。
◇◆◇◆◇
2、蘇るおもひで
職場に向かいながら、モモちゃんとの思い出が、走馬燈のようによみがえってきた。
モモちゃんは、立ち並ぶ本の上にちょこんと立って、本の背表紙の一番上をガジガジするのが好きだった。
モモちゃんは、どうやら紙をかじるのが好きだったみたいで、本の背表紙だけでなく、大事な書類だろうと研究構想のメモ書きだろうと、机の上に置いてある紙はなんでもガリガリしていた。
人間のこどもなら「だめでしょ!」と注意するところだけれど、モモちゃんなら許せてしまう。
てのひらにのせて、首のあたりをなでなですると、気持ちよさそうにするモモちゃん。
とにかく人懐っこかった。その姿にいつも癒されていた。
◇◆◇◆◇
3、新しい家族
でも、モモちゃんはもう、おうちにいない。
ゼミを終え、失意のうちに帰宅した私を、家族みんなが出迎えてくれた。
そして、新しい家族を見せてくれた。
狼狽した私からの電話を受けたK子さんは、私のことを慮って、その日のうちにセキセイインコを買ってきてくれたのだ。
モモちゃんとはちがい、きいろいインコだった。
あおいインコだと、モモちゃんとの思い出がよみがえり、かえって私を苦しめてしまうのではないか、という配慮からだった。
家族会議による慎重な協議の結果、名前はナナちゃんと命名された。

◇◆◇◆◇
4、家族のあたたかさ、再確認
家族会議の前。私は、K子さんとこどもたちに謝った。
「みんなの大事なモモちゃんを、ほんとうにごめんなさい。」
そうしたら、思いがけず、こどもたちから励まされた。
「モモちゃんは、どこかで元気に暮らせてるよ。」
「パパのせいじゃないよ。」
私「いや、パパの不注意だから・・・」
「どこかで、誰かやさしい人のところで元気に暮らしていけるかもしれないよ。」
だれからも、責められなかった。
また、涙があふれてきた。
(2020年11月2日部分削除・修正、11月3日写真を挿入)