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ものぐさ講師の徒然日記

窓際大学教員が、日々の暮らしで感じたことを、徒然なるままに綴っています(日・木曜日に更新)

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【学問の自由1】学術の世界と日常生活とは密接に関係している!?①――コロナの場合

Posted on 2020年10月6日2020年10月29日 by monogusalecturer2021

◆学術会議の任命拒否問題。日常生活とは関係ないのだろうか?

「コロナのせいで、みんな家計が苦しかったり、失業したりしているときに、学術会議の任命拒否云々で時間を取っている場合ではない!」

 もしかしたら、どこかでこうした非難の声が上がっているかもしれない。

 そこまでいかなくとも、「学問の世界なんて、うちらには関係ない」という声もあるかもしれない。

 もし、そんなふうに思っていらしたら、どうか聞いて欲しい。

コロナの影響をおおきく受けている普段の生活と、科学をつかさどる学術の世界とは、けっして疎遠な存在ではなく、むしろ密接に関係しているんだ、ということを。

くわえて、学術界の政治からの独立こそが、市民生活を円滑に進めることにすらつながってくるのだ、ということを。

「えっ!? なぜそう言えるの?」と訝しく思われるかもしれない。

そこで今日は、そんな疑問を解くためにも、学術の世界と日常生活との接点について、現在真っただ中のコロナ禍を事例に考えてみたい。

◆危機の時代に必ず必要とされる科学

 新型コロナウイルスの感染拡大に、どうやって立ち向かえばいいのか?

答えのないこの対策を決めるとき、世界中どこの国でも、科学者の見解がおおきな影響を与えてきた。どの国の政府でも、対立しあっている科学者の様々な知見のなかから、あるものを選択して政策を立案しなければならないからだ。

台湾、中国、韓国、アメリカの一部(ニューヨーク市など)、ヨーロッパの多くの国などは、初めのうちこそたいへんな状況だったけれども、無症状感染者にまで検査を拡大し、感染拡大を劇的に抑えることに成功した。

そうした国や地域があった一方で、ご記憶のとおり、日本政府の場合は「クラスター感染をしらみつぶしにしていったほうがよい」という科学者の知見を採用した。

当初のイギリスやスウェーデンのように、集団免疫を獲得する方向での政策をとった国もあった。

このように、社会が未知の体験に遭遇したとき、科学は、私たちの進むべき道についての選択肢を示してくれる、なくてはならない営みなのだ。

◆まちがった道しるべだってありうる

 ただし、いくら科学者の提起する道しるべであっても、未知の経験である以上、まちがっている場合は往々にしてありうる。

クラスター感染からの経路確認にこだわった日本の場合は、どうだっただろうか?

新型コロナウイルスの感染が拡大し始めたころからずっと、「市中感染が広がる恐れがあるから、できる限り検査の拡大をすべきだ」という科学者の指摘があった。けれども、政府は長らく、クラスター感染を調べればよいのだという科学者の見解を支持し続けた。

その結果、日本では、いまだに感染者が一定程度の水準で発生し続け、抑え込めそうな状況にはない。そして、感染経路がわからない感染者の割合が増え続けている。

検査を拡大し、早い段階で感染をほぼゼロの水準にまで抑え込んだ国や地域では、経済活動を早期に再開することに成功した。翻って日本は、感染者を抑え込めなかったため、『桃太郎電鉄』でも景気のよくなる夏休み期間ですら景気を回復させられないまま、いまに至ってしまった。

つまり、一部の科学者の示してくれた「クラスター感染つぶし」という道しるべを選択し続けた結果、市民生活にいちばんおおきな影響を与える、景気後退という経済活動での重大局面を迎えた可能性が高い、というわけだ。

◆政策を見直すべき段階で力を発揮する科学

このように、政府がどのような科学者の知見を政策に反映させるかによって、私たちの暮らしや経済の行く末が決まってくる。つまり、科学は、なんらかの危機が迫っているときに指針を与えてはくれるけれど、その選択次第では、市民生活への影響がとてもおおきくなってしまうのだ。コロナ禍は、そのような現実を如実に示している。

以上の市民生活と科学との接点は、拙ブログのカテゴリー「コロナ問題と公害との共通性」や「新型コロナウイルス問題」内の記事でたびたび指摘してきた。

そしてもうひとつ、拙ブログで指摘してきたのは、結果的に間違った選択だったとしても、「ちょっと違ったかな」と思える兆候があった段階で、一刻も早く、多様な角度から検証を行い、方針転換を図っていくべきだという点である。

このとき重要になってくるのが、実施されている政策の科学的根拠とは違った意見をもつ科学者の声だ。それがなければ、社会は、それまでとは違う方向へ進むための道しるべを得ることができなくなってしまう。最悪の場合、破滅に至ってしまいかねない。

だから、多様な科学者の意見が、政治の、時の権力者の意向によってつぶされるようなことがあってはならないのだ。

以上の理由から、学術の世界と私たちの日常生活とは、深く関係しているといえるのだ。

◆苦しい経済状況の要因を探るべきとき!

コロナを抑え込んだ海外の国や地域と違い、感染がむしろ増加傾向にある中で決行された政策、Go To トラベル。当初から「感染を日本中に広げてしまう」という科学者の指摘があった。

しかし、そうした政策の方向性と違った声は、採用されなかった。

結果、感染をほぼ抑え込めていた沖縄で、感染が再拡大してしまったように、国内での感染を拡大させる引き金になった可能性が極めて高い。

だが政府は、Go To トラベルが始まって以降、いたるところでクラスター感染が発生しても、政策のせいではないと言い続けた。

そして、今度はGo To イートである。

たしかに、経済の立て直しは急務だ。その点については完全に同意する。

けれども、「with コロナ」のスローガンのもと、検査を拡大せずにじわっと経済と両立させるという政策では、状況を改善できない可能性が高い。誰もが安心して、街に、観光地に出かけられるようにしないと、経済の完全な再興は難しいと思われるからである。

感染した人に全く罪はないのに、ひどいバッシングを受けるという日本特有の風潮もあるから、なおさらだ。

みんなが安心できるようにするには、無症状の人も含めた検査の拡大が欠かせない。海外の成功事例は、そう語りかけている。多くの科学者も、医学者も、そう訴え続けてきた。

未曽有の危機に直面する市民生活を守るには、そうした多様な科学者の声に耳を傾け、政策を見直しながら進むしかない。景気後退の重大局面が、私たちの日常生活を脅かしているいま、そうすべきときは、すでに来ている。

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