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ものぐさ講師の徒然日記

窓際大学教員が、日々の暮らしで感じたことを、徒然なるままに綴っています(日・木曜日に更新)

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【災害から考える9】温暖化を緩和するには

Posted on 2020年9月16日 by monogusalecturer2021

◆今年も高かった、夏の日本近海の海水温

7月31日のブログ記事【災害から考える2】で記した通り、直近の2016~19年は、日本近海の海水温の高さが、観測史上1位から5位を独占している。

今年の海水温もかなり高かったから、おそらく、ここ5年の記録のなかに食い込み、「直近5年間の日本近海の海水温が、統計史上、上位5位独占」という状況が続くのだろう。それに今年は、もしかしたら歴代1位にだってなりかねない。台風10号が発生したときには、海水温が異常に高いから、特別警報が出るかもしれないと気象庁が早めに警告を発するほどだった。でも、直前に東シナ海を通過した台風9号が、海水面付近の高温の海水と深い部分の温度の低い海水とを混ぜていってくれたおかげで、台風10号は予想されていたほどの猛烈な勢力にはならずに済んだ。

たいへんな爪痕を残し、尊いいのちがまたたくさん失われてしまったけれども、その点だけは、不幸中の幸いだった。

◆温暖化を緩和する方法

2010年度後半以降、日本近海の海水温の歴代記録が更新されているのは、地球の温暖化が要因だとみて、おそらく間違いないだろう。だから、豪雨災害を少なくするには温暖化の緩和が必要になってくるわけだけれど、そのための方法はいろいろある。

1つめは、【災害から考える6】で紹介したような、地元産材を建材として使う実践である。このとき記したように、地元産材を使えば、運搬時の化石燃料消費から出る二酸化炭素濃度を減らせるし、林業の活性化により、二酸化炭素の吸収も進む。今朝のグッドモーニングでは、昨日に引き続き岡山県真庭市の実践が取り上げられ、間伐材を薄い板にして交差させた建材(CLT=Cross Laminated Timber)が紹介されていた。

2つめは、食料の自給率をあげる取り組みだ。食料自給率が40%に満たない日本は、海外から、化石燃料を垂れ流して食料を輸入し続けている。自給率を高めれば、食料運搬時の二酸化炭素の排出も低減できる。それに、食糧安全保障の観点からも、天然のダムとなる耕地を維持し防災機能をはたす観点からも、自給率は上がったほうがいい。

3つめは、都市でもできる実践である。ドイツのハイデルベルクなどが有名だけれど、公共交通機関を充実させて、マイカーの利用を減らせば、二酸化炭素の排出量は減らせる。ビルの屋上や壁面の緑化を進めれば、ヒートアイランド現象の緩和にもつながる。

4つめは、再生可能エネルギーに転換し、できるかぎり化石燃料に依存したエネルギー生産と消費を回避していく実践である。昨日の朝のグッドモーニングで紹介されていた真庭市のバイオマス発電(間伐材を使った発電)のように、日本中で先進的な取り組みが実践されている。

◆国富を流出させる?orさせない?

こうした取り組みの結果、木材、食料、化石燃料の輸入を減らすことができれば、それらを購入している分だけの国富が、海外に流れずに済むというメリットもある。

一方で、日本にいるとあまり感じないけれど、再生可能エネルギーは世界の潮流となっていて、実は日本が国際競争から取り残されつつあるという現実もある。

エネルギーにつかう化石燃料を購入する分だけで、日本の国富は毎年20兆円ほど海外に流出しているらしい。10年経てば200兆円にもなる。一方で、他の先進国や中国は、再生可能エネルギー技術で世界をリードしつつある。国際的な経済競争の観点からみても、非常にまずい。エネルギー生産を国産の再生可能エネルギーに転換し、進歩した再生可能エネルギー技術を海外に輸出できるようにしたほうが、経済的にはかなりメリットがある。化石燃料を購入する200兆円をむこう10年間のうちに国内で循環させれば、地方と都市との経済格差も縮められるかもしれない。

会津電力の社長、佐藤弥右衛門さんも、2017年にお話を伺ったとき、国富の流出と、富の偏在による地方の疲弊にかんして、かなりおかんむりだった。

◆パリ協定

ちょっと話が経済によってしまった。温暖化の話に戻すと、つい最近までは、先進国が、何世紀にもわたって温室効果ガスを垂れ流しながら経済発展してきたのに、途上国の経済発展を阻害するような規制はご免だという南北対立が、世界の国々が一致して温暖化対策を進める障害となっていた。ところが、2016年には、パリ協定が締結された。『日本と原発』『日本と再生』の映画監督として有名な河合弘之弁護士によると、それが可能だったのは、再生可能エネルギー技術が飛躍的に進歩したのが要因だという。

先進国や中国からみれば、再生可能エネルギー技術を途上国に売り込める。ビジネスチャンスになる。一方、途上国からみれば、再生可能エネルギー技術を導入すると、それまで化石燃料の購入にあてていた国富を、国内に循環させることができる。両者の利害が一致したのだ。

ただし、パリ協定では、京都議定書のときと違い、もはや温暖化は止められず、その速度をいかに緩和するかに主眼が置かれている。それくらい、温暖化はやばい。対策は待ったなしの状況だ。

私たちの暮らす地球は、相当に踏ん張らなければ環境を維持できない土俵際まで追い込まれている。できるところから、少しずつ、いろんな取り組みを始めていく必要があるのだと思う。

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