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ものぐさ講師の徒然日記

窓際大学教員が、日々の暮らしで感じたことを、徒然なるままに綴っています(日・木曜日に更新)

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【コロナ問題と公害との共通点1】  やっぱり、全体像が把握できてなかったんだ!

Posted on 2020年5月14日 by monogusalecturer2021

◆世界が仰天するびっくりニュース!

「[東京 11日 ロイター]新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の副座長、尾身茂・地域医療機能推進機構理事長は11日の参院予算委員会集中審議で、軽症者や無症状の人が多くいるため現在行われている検査システムでは全ての感染者数を把握するのは難しいとし、「報告されているより(感染者の)数が多いのは間違いないが、それが10倍か20倍か30倍かは誰もわからない」と指摘した。福山哲郎委員(立憲・国民、新緑風会・社民)への答弁。

福山委員は、現在1万5000人超とされる国内感染者数は10万人以上いるのではないか質問。尾身副座長は、統計学的にはあり得るが感染者数は把握できず回答できないと説明した。」(※1)

このニュースを目にしたとき、〈え、専門家会議の副座長が、いまだにそんなこと言ってるの? しかもロイター通信で世界に配信されちゃったら、日本の恥じゃない!〉と頭を抱えてしまった。

◆世界中に晒された責任者の迷言

ロイター通信の記者さんは、なぜ、尾身副座長のこの発言だけをわざわざ切り取り、記事として配信したのだろう? お話ししたわけじゃないから完全な推測だけれど、それは、記者さんにとって、尾身副座長の発言がある意味「新鮮」だったからに違いない。

なぜ新鮮だったのか。それは、何とか新型コロナウイルスを封じ込めようと必死に努力している世界各国政府の姿勢とはあまりにもかけ離れた、政府系の専門家の信じがたい発言だったからだろう。

もちろん、どんな国だって、全国民を調査するだけの能力はまだ整っていない。だから、感染者の完璧な数は把握できない。しかし、いやだからこそ、統計学の手法を使って、すでに実施済みの調査数から感染実態の全体像を推計し、先手先手で対策を打とうとしている。

全体の感染者数と感染率、死亡率の推計データは、今後の対策を計画するうえで必須の情報になる。

重症患者、軽症患者、無症状感染者が各地域にどれくらいの割合でいて、地域全体としてどれくらいの感染率になっているかというデータは、緊急事態宣言をどの地域に出せばいいか/解除していいかを考える際に必須の情報となる。また、医療資源をどの地域に集中すべきかという計画を立てるときに必須の情報でもある。

このように、新型コロナウイルスとの「戦い」において絶対に必要なのが、科学的なデータなのだ。

世界各国政府が、科学的なデータに基づきこうした対策をとっている現実を知っているからこそ、ロイター通信の記者さんの目には、政府の専門家会議で科学者のトップに君臨する尾身さんが、まさか全体の推計すらしていなかったのかと「新鮮」に映ったのだろう。こうして、他国ではなかなかお目にかかれない専門家の「迷言」が、日本の専門家の言葉として世界中に配信されるという恥ずかしい事態になってしまった。

◆感染率を把握するには、疫学調査が有効

白鷗大学の岡田晴恵教授は、テレビ朝日の番組「モーニングショー」で、まだ真冬の頃からすでに、疫学調査の重要性を訴えられていた。

いくつかの地域を抽出し、それぞれ数百人にPCR検査をすれば、おおよその市中感染率が推測できる。そうすれば、どの範囲にどれくらいの期間で緊急事態宣言を出せばいいか、科学的な根拠をもとに判断できるし、国民にも説明できる。だから、みんなが納得できる。そうしなければ、一体どういう対策を取ればいいのか、私にも分からない。そういう趣旨のご意見を一貫して述べてこられ、現在に至っている。

もっともな意見だし、一刻も早くそうすべきだと私も思ってきた。なのに、はじめて指摘されてからもう3か月以上もの月日が流れてしまった。市中感染の実態の把握という大切な作業が、放置されてしまった。私たちはいまだに具体的なデータを示されず、全体像を把握できないままの外出自粛を強いられている。

◆驚きと、やっぱりね、という気持ち。

緊急事態宣言がなぜ全国一律なのか。その理由の裏付けとなる科学的根拠は、いっさい示されない。だからこそ、全国一律に、こどもが教育を受けられない状況が続くのは、事業者が営業を自粛し続けなければならない状況が続くのは「納得できない」という声が、ずっとあがり続けてきた。

そうした世論状況のなかで緊急事態宣言の延長に踏み切ったにもかかわらず、それを裏付ける科学的な根拠すら存在しない、だから首相の会見も尾身さんの会見も抽象論で終わってしまう・・・尾身さんの発言でわかったのは、この重大な事実だった。

新型コロナウイルスの発見から半年ほど経ったいまもなお、このように科学的なデータすら把握しようとしない政府の姿勢。いのちを預ける一国民としては、驚愕せずにはいられない。

でも、いっぽうで〈やっぱり、ね〉という気持ちもある。それは、今回の対応が、これまでの、公害被害者に対する国の姿勢と瓜二つで、なにも現政権に限った問題ではないからだ。このお話については、また次のブログで。

【注】

(※1)「実際の感染者数、報告の何十倍かはわからず=尾身・専門家会議副座長」ロイター通信(最終閲覧日:2020年5月12日)https://jp.reuters.com/article/japan-coronavirus-omi-idJPKBN22N0IT

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