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ものぐさ講師の徒然日記

窓際大学教員が、日々の暮らしで感じたことを、徒然なるままに綴っています(日・木曜日に更新)

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新型コロナウイルス問題4 新型コロナ経済対策② よみがえった災害ボランティアの苦い思い出

Posted on 2020年4月9日2020年4月10日 by monogusalecturer2021

◆フラッシュバックした苦い思い出

 コロナ対策で営業自粛を要請される飲食業者への直接補償は現実的でない、なぜなら納入業者への補償も必要になるから、という政府見解。これを聞いて、フラッシュバックしてきた出来事がある。それは、被災地で災害ボランティアに参加したときの、すったもんだである。

 災害ボランティアに従事したとき、被災された方たちのため、したくもない説得交渉を何度もしなければならかった、苦い思い出。今回の政府見解は、このとき、交渉相手が振りかざしてきた理屈と一緒じゃないか!と思ったのである。

 その理屈の論理的なおかしさは明日考えるとして、今日はまず、そのときのすったもんだの中身から記しておきたいと思う。

◆新潟中越地震の災害ボランティアへ

2004年10月23日。新潟県の中越地方を最高震度7の揺れが襲う、新潟中越地震が発生した。

行かなくちゃ! とっさにそう思った私は、進学したばかりの東京農工大学で、指導教員の許可を得、強硬に反対する先輩を何とか説得し、震度7を観測した川口町(現長岡市)での災害ボランティアに参加した。

初参加は11月2日。震災から10日ほど経っても、どの地域でどれくらいの損害が出たのか、川口ボランティアセンター(以下「川口VC」と表記)も把握できていなかった。そんな状況のなか、私はこどもと遊ぶ「のびのび隊」の活動に参加しつつ、地域で物資が不足していないかどうか把握するボランティア活動に参加した。

4日目に伺った地域では、住宅の広いガレージが避難所になっていた。そして、そこに詰めていらしたおじいさんから、衝撃の言葉を耳にする。

「ついさっき、薬が飲みたいからと、近所のおばあさんが水をもらいにきたけど、もう尽きてしまい、役場からの救援物資を待つべきかどうか悩んでいるのです」(※)

◆規則に跳ね返された!

それを聞いて、一緒に回っていた方とすぐ、水を得るため川口VCに取って返した。

ところが、すんなりと事は運ばなかった。災害発生からまだ2週間しか経っていないのに、物資の公平な分配を期すという目的で、被災者が自分で取りに来た場合に限り物資を渡すという規則が、川口VC本部内でとり決められていたのである。

私たちは粘った。いまこの瞬間に薬を飲む水がない人に待てと言うんですか、と。でも、なかなか分かってもらえない。規則を盾に説得が何度も跳ね返される。

長い時間を本部での交渉に費やしつつも、物わかりのいい人が代わって出てきたとき何とか水を調達。避難所に戻り、無事、おばあさんにお水を届けることができた。

◆不平等を生んでいた「正義」

私にとっては、ただ無用な交渉をするよう迫られるだけだった規則。それでも、川口VC本部の人たちにとっては「正義」だったのだろう。でも、この「正義」は、現場での不平等を生んでいた。

被災された方にも仕事がある。簡単には休めない。地震で滅茶苦茶になった自宅、仕事先、農地などのあと片付けもある。だから、川口VCの受付時間内に、物資を取りに行くヒマがない。お年寄りやこどもたちは時間的に余裕があるかもしれないけど、こんどは取りに行くための手段がない。その結果、被害の大きい住民ほど、救援物資にあずかれない。震災からまだ2週間も経っていないのに、そういう事態に陥っていたのだ。

本部の規則のせいで、その後、「なんで頼んでいた物を持ってきてくれないんだ!」と住民の方から避難所で怒られることもあった。でも、すべての方が、事情を話したらご納得くださった。そして、物わかりのいい本部のボランティアさんが当番の時にこっそり頂き、依頼から数日経ってようやくお渡しすることができる、ということが再々あった。この時のことを思い出すと、いまでも申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。

◆非常時には「3を4にする理論」が必要!

本部の人たちには、「正義」をつくるにあたり、物資が足りなくなったら困るという発想もあったようである。そんな気持ちも分からないではない。でも、非常事態だとはいえ、ほかの地域は無事なのだから、物資がなくなりそうだと正直に話せば、支援してくれる先はかならず見つかる。関係各所や企業などに連絡して、頭を下げて依頼すればいい。まさに、昨日ご登場頂いたお兄ちゃんが提唱する「3を4にする理論」だ。こどもの目は真っすぐなんだな、と改めて思い知らされる。

それに、手厚く物資を配布するのは、何も悪いことではない。被害が大きかった世帯ほど、日常生活を維持するための物資は、そのほとんどが失われている。2週間ずっと同じ作業服を着ているという方もいた。それに、自宅を再建するのにいくらかかるかわからない、という不安も襲ってくる。

そういう方たちが、できるかぎり早く日常生活を送れるよう支援することこそ、本当の意味での平等を目指す活動だと思う。ボランティアには、物資を囲って取りに来いという姿勢ではなく、忙しい住民のみなさんにかわって、必要な物資を把握し、各所に支援を要請する活動こそ、求められるはずである。

非常時には、可及的速やかに3を4にする活動が必要なのだ。それは新型コロナの経済対策も同じで、苦しいお店や中小企業、世帯には、できうる限りの支援をしないといけないのだ。この点については、正義論の観点からも裏付けうると思っている。でも、それを言い出すと長くなってしまうので、この点については明日の記事で記そうと思う。

【注】

(※)拙著(2006)『新潟震災ボランティア日記――被災地の「自立」論?』新風舎、22頁。

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