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ものぐさ講師の徒然日記

窓際大学教員が、日々の暮らしで感じたことを、徒然なるままに綴っています(日・木曜日に更新)

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【戦争と平和3】東京大空襲

Posted on 2022年3月10日 by monogusalecturer2021

~~~~~

◆避難

 77年前の今日の未明。東京の下町を中心にたくさんの焼夷弾が落とされた。

 私の大叔母は、そのなかを生き延びた人である。

 2005年。戦後60年目の夏に、その壮絶な体験を初めて教えてもらった。

 細かいところはだいぶ忘れてしまったけれども、初めて聴いた体験談は、17年経ったいまも私の脳裏から離れずにいる。

 当時、大叔母は14歳。近所には文具店を営む親戚の家族も住んでいた。

 空襲警報が鳴って、文具店の親戚一同は、地下に掘ってある防空壕に避難した。

「今日はちょっと雰囲気が違うから、遠いところに逃げたほうがいいんじゃない?」

「いや、ここで大丈夫だよ。」

 そんなやり取りをしたあと、大叔母の家族はガス工場に向かった。

 ガス工場には、ガスタンクがある。だからほとんど避難している人はいなかったらしい。

 けれども、大叔母のお父さんは、ガスタンクがもし爆撃されたとしても、ガスは地下に潜る構造になっていると知人から教えられていた。だから、広い敷地の拡がるガス工場を避難先に選んだのだ。

~~~~~

◆火の粉

 でも、この日の空襲は様子が違った。

 燃え盛る町のほうから、ガス工場に逃げている人たちに向かって火の手が襲ってくる。それと同時に、火の粉がこれでもかというほど降りかかってくる。

 徴兵されずに残っていた中高年の男性たちは、できるだけ火から遠いところに、お年寄り、女性、こどもを固まってすわらせ、そのうえに降りかかってくる火の粉を、筵などを使って払いのける。

 何時間も経つと、火の粉を振り払う腕も疲れてくる。炎の威力はどんどん増し、熱風とともに押し寄せてくる。

〈もうダメか・・・。〉

 みんながそう覚悟を決めかけた瞬間、風向きが変わった。

「まだいけるぞ!」

「あきらめるな、がんばれ!」

 炎からの熱圧が低下して勢いづいた大叔母の父たちは、おたがいに声をかけながら、火の粉を必死に振り払った。

 そして、夜が明けるころ。火の手は次第に収まっていった。

 大叔母たちは助かったのだ!

~~~~~

◆重い言葉

 ところが、問題が起こった。必死に火の粉を振り払っていた父が、「目が見えない」のだという。

 大叔母は〈お父さんの目が見えなくなったらどうしよう・・・〉と気が気ではなかったという。

 幸い、その後の診察で原因が分かった。

 お医者さんによると、火の粉を必死に振り払っているうちに、煤が目に入ってしまっていたのだという。そういうわけで、目を洗浄して大事に至らずにすんだ。

 でも、家族と自宅付近に戻った大叔母は、茫然としてしまう。

 幼少期を過ごした我が家は燃え尽きてなくなり、防空壕に避難していた文具店の親戚一同はみな、蒸し焼き状態になって亡くなっていたという。

 大叔母は、大泣きせずにはいられなかった。

「たった一晩で、ひとりひとりの大事ないのちが、たくさん奪われてしまったんだよ。だからね、戦争は絶対にしてはいけないんだよ。これだけはよ~く覚えておいてね。」

 真剣に語ってくれた大叔母の声が、脳裏にこだまする。

 コロナがおさまったら、今度はきちんとICレコーダーをもって話を聴きに行こう!

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