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ものぐさ講師の徒然日記

窓際大学教員が、日々の暮らしで感じたことを、徒然なるままに綴っています(日・木曜日に更新)

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【災害から考える26】大雪考③――市民のいのちと生活を守るために(2014年2月19日(水))

Posted on 2022年2月12日2022年2月11日 by monogusalecturer2021

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1、そのつど風化してしまう災害の教訓

 地形が急峻で、雨や雪が多く、台風も襲来し、火山国で噴火や地震も発生しやすいこの国では、毎年必ず自然災害が発生し、そして多くのいのちが失われている。

 なのになぜ、悲劇は繰り返されてしまうのだろうか?

 その根本には、大規模な災害を幾度経てもなお、抜本的な災害対策がなかなか講じられないという現実があるのだろう。自治体レベルでは頑張っていても、それが線となり、面となって国につながるシステムにはなっていない。縦割り行政のなかで、意識の高い官庁があったとしても、政府レベルでは防災への意識は薄いし、優先順位も高いとはいえない。災害対策は防衛政策よりも下位におかれているというのが実態なのだろう。国土交通省のように早期に物資を配布した省庁もあれば、防災担当大臣が初会合を災害発生2日後に開くといったように、今回の大雪に対するちぐはぐな政府の動きも、そのような政府の姿勢を類推させる。

 抜本的な対策を講じようとしないから、過去の教訓が生かされない。過去の自然災害はそのつど風化し、類似の災害が起こっても、同じようにあたふたし、同様の失敗を繰り返す。

 たとえば2000年の有珠山噴火災害を、みなさんは覚えていらっしゃるだろうか。

 同災害では、火山性微動が始まってからわずか4日で、洞爺湖温泉街に噴石が降り注ぐ大規模な噴火が起こった。このとき、備えとしてものを言ったのは、ふだんから地元に説明に入り、地域住民に絶大な信頼を得ていた北海道大学の岡田弘教授の判断だった。岡田教授の存在がなければ、また岡田教授とともに防災対策を進めてきた周辺市町村、とくに旧虻田町の努力がなければ、多くの住民が半信半疑で逃げ遅れ、犠牲者が出たかもしれないといわれている。

 有珠山噴火は、20~50年に一度は必ず起こる。だからこそ周辺市町村は、岡田教授と協力し、周到に準備を重ねてきた。火山性微動が始まった際も、地元と北大がイニシアティブを発揮し、迅速かつ正確な情報を流すよう努めた。その結果、16000人もの地域住民の迅速な避難に成功し、奇跡的に犠牲者ゼロですんだのである。

 だが、わずか14年前の、奇跡ともいうべきこうした成功事例ですら、いまではすっかり風化し、記憶にある方は少数だろう。社会全体で、災害の事例に学び、教訓化するという営為ができているとは言い難い。

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2、深刻な「過去に学べない病」

 今回の大雪だって、20年に一度の頻度で訪れる。しかし、この国では、数十年に一度しか襲ってこない災害のためにいちいち対策費を計上できぬという論調が、今回も、これまでの災害でも支配的である。一方で、戦争の備えだけは、まだ足りぬ、まだ足りぬと言って邁進している。

 だが戦争は、政治的努力によって回避できるものである。石場茂幹事長がいうように、世界中から非難され、多数の人が犠牲になる戦争を起こすような国はそうそうない。だから、絶対不可避の自然災害とはわけが違う。戦争は、外交が失敗した結果としての、最大の人災(・・)である。

 毎年必ず発生する自然災害での犠牲をなくせない理由は、「いつ来るかわからないから」という理屈で十分な災害対策費を充てられていない現状にある。一方、政治的努力によって回避できるのに、国防費にたくさん税金があてがわれている理由もまた、「いつ来るかわからないから」である。

 本来回避できるはずの人災にだけ備え、毎年必ず市民が犠牲に自然災害に備えようとしないという点で、これは究極のダブルスタンダードだし、本末転倒の論理だともいえる。

 このようなダブルスタンダードと本末転倒の論理が、いつまでたってもぬぐい切れないこと自体、過去の事例に学び将来の対策に生かすという歴史的実践をなかなか成し遂げられないという、この国の深刻な社会的病の深刻さを象徴している。

 日本は戦後、夥しい数の災害関連死を見届けてきたはずである。しかし、実際に見届けてきたのは災害が起こるたびに積み重なる災害関連死者数というデータ上の数字であって、個々具体的な災害の種類や特徴をふまえ、そのなかで犠牲者がどのような形で不幸な死に至ったのかという現実と向き合うのを避けてきたのではないか。

 だからこそ、何十年経っても、災害が起こるたびに、同じような後手後手の対策に終始してしまっているのではないだろうか。

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3、いのちと生活の視点から災害対策を優先する社会へ

 首都圏の直下型地震は、約70年間隔で発生してきたのだという。20年ぶりの大雪は、へたをするとその間に3回もやってくる。寒冷化しているのか、はたまた温暖化しているのか、科学者の見解は割れているけれども、いずれにしても、大雪の年が今後多くなる可能性は、誰にも否定できない。

 最新式の兵器や武器を揃え、古いものをどんどん更新するのも、たしかに必要な作業だと思う。しかし、国防政策が重視しているはずの、市民の生活といのちの保護という視点から見れば、あわせて早急に開発し揃えるべきなのは、毎年必ず発生し、市民のいのちを奪ってきた自然災害に対処するための道具や設備、そして装備のはずである。また、ノウハウを蓄積してきた自治体、消防・レスキュー、NGO・NPOが連携し動きやすくするような支援のしくみのはずである。

 政治により回避できる戦争に備えるための軍事力に比して、自然災害という具体的な危機に対処するための資材や対策が、残念ながらまだだいぶ脆弱だ。また、災害対応を自治体に丸投げしすぎている側面もある。

 今後どれだけ自然災害が襲ってこようとも、それに対応しうる設備や道具を開発・設置し、それらを使いこなせる人材を育成・配置することこそ、政府が真っ先になすべきことのはずである。

 その努力を怠れば、毎年、自然災害による犠牲者が多数出てきた歴史を、今後も繰り返してしまいかねない。

 今こそ、いのちと生活の次元から、自然災害という具体的かつ継続的な災害に対処する方策と体制の構築を、社会全体で考えるべき時ときなのではないかと私は思う。

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~資料~

【記事】大雪による立ち往生 太田国交相「対応能力超えるもの」

 太田昭宏国土交通相は2月18日の閣議後会見で、関東甲信地方などの記録的な大雪により各地で自動車が立ち往生していることについて「対応能力を大きく超えるものだった」との見解を示した。

 太田国交相は今回の立ち往生について、「冬装備が不十分な車などによる追突事故やスタックをきっかけに立ち往生が発生し、その結果、除排雪作業が困難になる連鎖が起きたことが原因」と分析。再発防止策として「早い段階で通行止めを行い、渋滞が発生する前に集中的、効率的な除雪を行えるよう改善したい」とするとともに、「ドライバーに対する情報提供のあり方も改善したい」などと述べた。

 国交省によると、18日午前6時現在、北海道を含めて通行止めとなっている道路は、高速道路14区間を含む424区間で、立ち往生車両に対しては、地元自治体と協力して食料1万6000食、ガソリン9000リットル、休憩所の提供などを行った。

 関東地方の高速道路については、東名高速、中央道、関越道などの主要幹線道路は通行止めを解除し、残る路線についても19日までに解除する見込み。また、国道18号碓氷バイパスも通行止めを解除し、国道20号の神奈川県大垂水峠、山梨県大月市については、1車線分の除雪を19日中に完了する見込みだという。

レスポンス 2月18日(火)17時27分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140218-00000033-rps-soci

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