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ものぐさ講師の徒然日記

窓際大学教員が、日々の暮らしで感じたことを、徒然なるままに綴っています(日・木曜日に更新)

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【技・文化・伝統1】杖立温泉の配管工、芦塚勲さん

Posted on 2022年1月14日2022年1月14日 by monogusalecturer2021

~~~~~

1、懐かしい響きの杖立温泉

 今日(13日)は、週末にあった仕事の振替休日の一日。

 ちょっと理由があってK子さんをある場所へ車で送り自宅へ戻ったあと、「よっこらしょ」と腰を下ろしつつテレビをつけたら、NHKの『小さな旅』という番組がちょうど始まったところだった。

 紹介されていたのは、懐かしい響きの杖立温泉。

〈杖立温泉って、中学の修学旅行で泊まった温泉地じゃないか!〉

と懐かしく思って、そのまま番組を視聴した。 

 私が中学生の頃、鹿児島の公立中学校の修学旅行は、だいたい九州一周という名目で開催されるのが慣例となっていた。ただし、九州一周といっても、小学校の修学旅行で一泊したことのある宮崎県は高速道路で通過するだけ。バスガイドさんが高速道路で宮崎県を通過中に無理やり盛り上げる感じで、〈これでいいのだろうか?〉とこども心に思ったものだった。

 記憶では、1日目が長崎県で、グラバー園などを見て回りそのまま宿泊、2泊目が杖立温泉だった。

◇◆◇◆◇

2、たった一人の配管工

 正直な話、杖立温泉で覚えているのは、泊まったホテルの一室に級友6人がすし詰め状態で押し込まれ、なかなか眠れなかった夜のことくらいで、そのホテルの名前も思い出せない。

 だから、番組を見るまで、杖立温泉が100℃の熱い温泉であること、しかも住宅の暖房にその蒸気が使われていることなど、まったく知らなかった。でももし、28年前の修学旅行でバスガイドさんが紹介してくださっていたら、たんに忘れているだけで恥ずかしい話なのだけれど・・・。

 そんな感傷はさておき、番組では、杖立温泉で配管工を50年続けてこられた芦塚勲さん(81歳)のお仕事のようすが紹介された。3日に1回は仕事が舞い込むそうで、トラブルをみると、だいたいの原因がわかるのだという。

 まさに、熟練の技だ。

 でも、なんと、いまでは杖立温泉でたったひとりの配管工なのだという。

 そんな芦塚さん、インタビューに「ほんとうなら辞めたいですよ」と仰っていた。でも、地域の人たちが感謝してくれるから、半面で楽しい、だから辞められないのだと。

◇◆◇◆◇

3、継承が途絶えるかもしれない!?

 杖立温泉で最後の配管工が、81歳の芦塚さん。

 そして、辞めたい気持ちもあるけれど辞められない、という現実。

 何気なく見始めたけど、これって、端的に言って大問題なのでは!? そう感じた。

 なぜなら、蘆塚さんが仕事を辞められたら、杖立温泉の配管を守る技が途絶えるかもしれない、ということなのだから・・・。

 しかも問題は、それだけではない。

 SDGsが世界的に目指すべき目標となったいま、自然環境への負荷の少ない地熱を利用した地域づくりは、今後、各地で増えていくだろう。

 それなのに、そのような街づくりの基盤を支える配管工事の技の継承が、途絶えようとしている。

 これは、持続可能な日本社会のこれからにとっても、おおきな損失ではないか・・・!

 番組を見ながら、愕然とする自分がいた。中学時代の思い出から懐かしい響きだな~と思い、偶然視聴した番組で、こんな気持ちになるとは思ってもみなかった。

◇◆◇◆◇

4、願い

 夜、ブログを書くため番組を見直そうと思ったら、塾から帰ってきた長男のNくん(高1)がご飯を食べていたので、一緒に視聴した。このとき、お昼に見逃した番組の冒頭部分をみて、番組のサブタイトルは「湯けむり 守り守られて ~熊本県 杖立温泉~」だと知った。

 私はNくんにダメもとで提案してみた。

  わたし「Nくんが『杖立温泉を守るために技を継ぎます!』って手をあげたら?」

  Nくん「俺にはそんな行動力はないな・・・。大事なことだとは思うけど。」

 そんなことをわが子に提案するまえに、本当なら自分が真っ先に手をあげればいいのだけれど、家庭も仕事もあって、かんたんには身動きが取れない。これまでも、各地で途絶えていくいろいろな文化や技を見聞きするたび、なにも力になれない自分に歯がゆい思いがしてきた。情けない。

 蘆塚さんは、昔たくさんいた芸者さんが少なくなり、杖立温泉が寂しくなってきたのをみて、48歳のとき一念発起し始めた男芸者を夜は勤めていらっしゃるのだという。

〈そんな、杖立温泉への愛にあふれる芦塚さんには、どうか末永くお元気で、一日も長く杖立温泉の配管を守ってほしい。できるなら、技を継承したいという若い人が出てきてほしい。〉

 そう思わずにはいられなかった。他力本願で、ほんと申し訳ないのだけれども・・・。

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