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ものぐさ講師の徒然日記

窓際大学教員が、日々の暮らしで感じたことを、徒然なるままに綴っています(日・木曜日に更新)

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【教育に関すること1】「こども家庭庁」と「こども庁」

Posted on 2021年12月18日2021年12月18日 by monogusalecturer2021

~~~~~

1、グッときた呼びかけ文の署名キャンペーン

 こども家庭庁の創設を目指す自民党の若手議員の勉強会で講師としてお話された風間暁さんという方が、以下の署名キャンペーンを開始されています。

『Change.org』「家庭単位じゃなく、子ども個人に目を向けてほしい!再度「こども庁」に名称変更を!」

https://www.change.org/p/%E5%AE%B6%E5%BA%AD%E5%8D%98%E4%BD%8D%E3%81%98%E3%82%83%E3%81%AA%E3%81%8F-%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E5%80%8B%E4%BA%BA%E3%81%AB%E7%9B%AE%E3%82%92%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%A6%E3%81%BB%E3%81%97%E3%81%84-%E5%86%8D%E5%BA%A6-%E3%81%93%E3%81%A9%E3%82%82%E5%BA%81-%E3%81%AB%E5%90%8D%E7%A7%B0%E5%A4%89%E6%9B%B4%E3%82%92-%E3%81%93%E3%81%A9%E3%82%82%E5%BA%81%E3%81%AA%E3%82%89%E5%BF%9C%E6%8F%B4%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99/sign?cs_tk=AhKd6EuNyXgyA1CgxWEAAXicyyvNyQEABF8BvHmeXq22PpaUK8ka_ncaMKM%3D&pt=AVBldGl0aW9uAIkW5AEAAAAAYbxlzcTj8E8xNzVkZWFkMg%253D%253D&source_location=aa_sign_ask&utm_campaign=bae1bcc3f9524fb9a2aaf126a23bcc53&utm_content=initial_v0_4_0&utm_medium=email&utm_source=aa_sign_ask&utm_term=cs

 私、風間さんの呼びかけ文を読んで、多くの方に読んでもらいたい、そしていまこのときも苦しんでいるこどもたちのために、この署名キャンペーンがもっともっと広がってほしいと思いました。

◇◆◇◆◇

2、家庭が地獄

 とくにハッとさせられたのは、「こども家庭庁」という呼び名にたいする風間さんのご指摘です。

 風間さんが話を聞かれた、DV被害、宗教の強要被害など、こども期に家庭で虐待を受けた「被虐待経験者にとっては、家庭・保護者こそが加害者です」。そして「もちろん家庭という場所は地獄」だったと。そうであるからこそ、「つまり、私たちの目に映る庁の名称は、『子ども地獄庁』」だと・・・。

 勉強会では、「自分と周囲の仲間たちのそういった経験からくる痛みを、率直に伝え」られたそうです。そうしたら、議員さんたちは心から賛同され、こども庁という名称へ変更する方向でいったんは自民党内での議論が落ち着いたそうです。

 でも、保守的(?)な家庭観をもっている議員さんたちの巻き返しにあい、「こども家庭庁」へと名称を戻すという動きになったので、この署名キャンペーンを立ち上げられたそうです。

 風間さんは、「一番最初の報道(12月14日、共同通信)では、自民党が「子ども家庭庁」という名称に変更する可能性を示唆するとともに、その理由を『伝統的家族観を重視する自民党内保守派への配慮』と書かれて」いた12月14日の共同通信の記事を見たとき、「まず『子どもや被虐待者への配慮より、党内にいる大人への配慮が優先される構造なんだな』と思いました」と心情を吐露されています。

◇◆◇◆◇

3、問題はみんなで共有しないといけない

 風間さんのこの落胆の気持ちを読んで、私は、たまたま一昨日YouTubeでみつけた動画を思い出しました。テレビコメンテーターをされているおおたわ史絵さんとたかまつななさんとの対談です。

 おおたわさんは、お母さんがたいへん厳しい教育ママで、褒められた記憶がないそうです。しかも、お母さんが薬物依存、それが終わったあとには買い物異存にはまってしまい、「死んでほしい」と思ったこともあったそうです。

 家庭が、こどもにとっての地獄となる可能性。それは、虐待にも、保護者のいろんな依存症にもあるんだと教えられたのです。

【動画】『たかまつななチャンネル』2021年5月24日

「母を捨てる?薬物依存・買い物依存の母をもった苦悩を赤裸々に語る。【おおたわ史絵】」

 おおたわさんは、お父さんが苦しんでいるのを見て、お母さんの依存症から距離を置いていたことを後悔されたそうです。そしてなんとかしようとしたとき、家族だけではどうにもならず、お医者様や、同じような境遇にある方たちに助けてもらったとお話されていました。

 そうした経験から、依存症は病気であって、家族だけではどうにもならないのだから、ぜったいに家庭だけに背負わせちゃいけない、家族は苦しみを外に示していかなくてはならない、社会全体で偏見をなくしていかなければ依存症患者はよくならない、強調されていました。

 風間さんのキャンペーンの文章を見て、問題を抱えた家庭は社会全体でなんとかしないといけないという、おおたわさんのこうした指摘を思い出したのです。

◇◆◇◆◇

4、日本の子育ては家庭だけが担っていたわけではけっしてない

 でも、伝統的(?)な家族観は、家庭だけに育児の責任を負わせようとします。

 しかしながら、これは、日本の伝統的な子育ての方法だとはいえません。

 16世紀、日本へ宣教のためにやってきたルイス・フロイスが、日本のこどもがいかに伸び伸びと育っていて、おとなたちがおおらかな目で見守っているか書き残していることは有名です(『ヨーロッパ文化と日本文化』岩波文庫、1991)。

 こども学や社会教育学などの研究からも、日本では、こどもたちを、おとなや年長のこどもがいかに多くの目で面倒を見てきたかがわかります。

 だから、子育ては母親が基本的に行い、父親は厳しくふるまうことが、立派な大人に育てるための最良の方法だという価値観は、一部節階層にはあったかもしれませんが、伝統的なものだとはいえないのです。

 むしろ、ほんとうに伝統的になされてきた、多くの目でこどもたちを見守る子育てこそ、いまの社会に必要な価値観ではないかと私は思います。多様化した現代には、こどもの数だけ、こどもたちにとって必要な環境があるからです。

 ご近所、地域社会、公民館、児童館、保育園、幼稚園、自然、公園、いきつけのお店のおとな、学校、フリースクール、こども食堂、児童養護施設、秘密基地、友だちの家、田舎、おじいちゃん・おばあちゃん家・・・。このなかで、家庭はひとつの要素に過ぎないはずなのです。

 こどもがきちんと育たないのは家庭のせい、母親のせい、などといわれると、責任を感じる保護者が増えるだけで、ますますおいこまれて、悩みがいえなくて、せっかくこども家庭庁を創設したのに結局は何も解決しない、という結果となる未来もありえます。

 名は体を表す。だから、名称はこども庁のほうがよいと私も思います。

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