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一昨日から昨日にかけて鹿児島を襲った豪雨では、人的被害がなかったようで、ほんとうに安堵しました。でも、熱海ではまだ、懸命な救助活動が続いています。行方不明の方がたが一刻も早く発見されるよう、祈らずにはいられません。
今日は、お約束した週2日の更新日なので、Tくんがキュウリを食べられるようになったシリーズの続編をお届けします。災害続きのこのようなときにふさわしい内容ではないかもしれませんが、新たに記事を紡ぐ時間がないので、どうかご容赦ください。
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14、温泉宿のマスターに説教される。
実は、キュウリを食べられるようになったTくんの頼もしい姿を見ていて、脳裏に蘇ってきた苦い思い出がある。
前任校のある町に移住する前だから、もう10年以上前のことなのだけれど、「引っ越す前の思い出づくりに、旅行をしよう!」という話になり、ある温泉宿を予約するため、電話をした。
ここまで書いてきた、味覚に関する子育て上のルールがある私は、食事について相談した。
「こどもの食事は、どうなりますか?」
「親と同じメニューで、数が減るだけです。」
このころ、まだ保育園児だった長男と次男は、好き嫌いがいまよりかなり多かった。なので、私は次のようにお願いした。
「別料金を払いますので、こどもむけのメニューで食事を用意してもらうことはできませんか? ふたりとも、好き嫌いが多いので、申し訳ないのですけれどもお魚よりお肉メインのほうがいいのですが・・・。」
すると、あきらかに怒気が込められた宿のマスターの返答は、次のようなものだった。
「ちょっと甘やかしすぎじゃないですか? こどものうちは、嫌っている食べ物だって、泣かせてでも食べさせるべきでしょう! うちの娘たちだってそうやって育ててきたんだから」云々・・・。
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15、温泉に入れるはずが・・・
こちらの親としてのポリシーを確認されることもなく、一方的に説教をくらってしまった。
ムッとしたけど、けっきょくこども料理の用意はしてもらえないことになった。
そして旅行の当日。宿に到着したのは、ちょうど午後5時くらいだった。
「ご飯までは、まだ1時間くらいあるだろうから、みんなで温泉に入ってからご飯を頂こっか。」
K子さんとそう話ながら、通された部屋に入ると、おかみさんから残念なお知らせがあった。
「今日は、8人の宴会の人たちがいて、その用意が大変なので、先にご飯を食べてもらいます。だから、お風呂には入らないで待っていてください。」
電話の件をマスターから聞いていたからなのかどうかは知らないけれど、かなりそっけない感じでそう言われて、ちょっとムッとした。けれど、〈そういうことなら仕方ないか・・・〉と無理やり自分を納得させた。
そのあとは、こどもたちと遊びながら、部屋で夕食の連絡を待った。
でも、一向に呼び出しがかからない。
そして、食事に通されたのは、何と、それから1時間以上が経過してからだったのだ!
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16、最悪な夕食の時間。
ハッキリ言って、頭にきた。しかも、料理もそんなにおいしくなかった。
ブラックペッパーで味をごまかした切り身の鱈が、メインディッシュ。
K子さんと「なんだこれ?」と、渋い顔を合わせあって、いまいちの食事をおなかに収めた。
〈1時間以上待つのなら、せめて温泉で暖まりたかったな・・・。〉
ところが、そんな私たちの気持ちをよそに、マスターもおかみさんも、何ら悪びれることなく、とくに詫びる様子もなく、8人の宴会のほうを優先して、せっせと飲み物の注文を取っている。
こうして、最悪な食事の時間を終えた。
このときに思った。相手の言葉に〈なぜ?〉と思えずに、自分の価値観を押し付けてくる人は、こういう場面でも、自分たちの都合を優先するんだな、と。そして、その結果としてたとえ迷惑をかけていたとしても、気づくこともできず、謝ることもないんだな、と。
どうせなら、私がこどもの料理を相談した時点で、断ってもらっていればよかった。
〈もしかしたら、宴会の人たちの用意があって、こどもの別メニューをつくる余裕がなかったから、電話ごしで強気に出られたのかも!〉と意地悪な妄想を巡らす自分がいた。
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〈あんな宿、もう二度と行くもんか!〉。
Tくんがキュウリを食べられるようになったと聞いて、当時のそんな気持ちが、フツフツと蘇ってきてしまった。
もちろん、Tくんにはなんの落ち度もなく、自分で勝手にムシャクシャしているだけなのだけれど。
でも、なんだかんだ言って、これも、K子さんと価値観を共有できるという意味では、いい思い出になっているのかもしれない。